ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「ええ、とてもリーゼを大切にしていてだけてうれしい限りですわ」

 淑女の笑みでこたえたクリスタだったが、そこには明らかに落胆の色があった。

(あんの甲斐性なしがっ)

 ここにジークヴァルトがいたら、殴り飛ばしていたかもしれないとアデライーデは本気で思った。

「クリスタ様。どうか社交界デビューのための準備は、ダーミッシュ家でお願いできませんか? こんな直前に申し上げて心苦しいのですが、弟にはわたしから言っておきますので」
「ですが……」

 フーゴが困ったように言った。

「では、費用は弟に負担させます。そうすれば公爵家としての面子も保たれますし。それに、クリスタ様もリーゼロッテ嬢とドレス選びをなさりたいでしょう?」

 アデライーデの言葉に、クリスタは水色の瞳を輝かせた。アデライーデの言うように、本当はリーゼロッテのためにいろいろと社交界デビューの準備をしたかったのだ。だが、公爵の申し出を断ることなどできずに、泣く泣くあきらめて今日にいたる。

 クリスタは伺うようにフーゴを見つめた。

「そのお申し出は、わたしたちとしてはうれしい限りです。ジークヴァルト様の許可がいただけるのであれば、喜んでそうさせていただきます」

 フーゴの返事にアデライーデは満面の笑みで頷いた。

「わたしにまかせてください。ジークヴァルトには否とは言わせません。こちらこそ、そんなことになっているとは知らず、ご迷惑をおかけしました」

 頭を下げるアデライーデに、フーゴとクリスタは慌てたように言った。

「そんな恐れ多い。頭をお上げください」

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