ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 リーゼロッテの部屋に着くと、エラが紅茶とお菓子を用意して待っていた。

「ここはいいから、エラもみなと一緒にあちらで食べてくるといいわ。せっかくヴァルト様が贈ってくださったのだし」
「ありがとうございます、お嬢様。お言葉に甘えさせていただきます。何かありましたらすぐお呼びください」

 アデライーデとふたりきりで話したいのだろうと思い、エラはすぐ使用人たちの部屋へと下がっていった。

 ジークヴァルトは、屋敷のみなの分もお菓子を用意してくれていた。男性陣には酒なども届けられていたようだった。

(使用人にまで気を遣っているなんて。これはマテアスの入れ知恵ね)

 マテアスとはジークヴァルトの侍従のことだ。
 あのジークヴァルトがこれだけリーゼロッテに執着を見せているのだ。きっと今頃、公爵家では上を下への大騒ぎになっていることだろう。知らず、アデライーデは口元に笑みが浮かべた。

 その目の前で、ジークヴァルトのお菓子をひとくち食べたリーゼロッテの顔が、へにゃりとほころんだ。瞳を閉じたまま頬に手をあてて、うっとりとその菓子の味を堪能しているようである。

(なるほど。ヴァルトはこれを見たかったのね)

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