ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 ここにジークヴァルトはいないので、まじまじとリーゼロッテの顔を見つめながら、アデライーデはざまぁな気分を楽しんでいた。

「アデライーデ様。こちらのショコラはくちどけがよくて、もうとろけそうですわ」

 見ている方がとろけそうな表情を向けたリーゼロッテに、「ほんと、食べちゃいたいわね」とアデライーデはぽそりと返した。

「はいっ、ぜひお召し上がりくださいませ」

 満面の笑みで菓子をすすめてくるリーゼロッテに、「くっ、かわいすぎるわ」とアデライーデはめまいを覚えて額に手を当てた。

 ジークヴァルトの前でもこうなのだろうか。それでなくとも、託宣の相手同士は惹かれ合うという。特に男側の執着はひどいと聞く。自分の両親を見ても、それは疑いようのないことだった。

 無防備なリーゼロッテの前で弟の自制心はきちんと機能するのか、心配になってきたアデライーデだった。

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