ふたつ名の令嬢と龍の託宣
     ◇
 その日、リーゼロッテは白いハンカチに刺繍を刺していた。ジークヴァルトにプレゼントするためだ。

 前に渡した刺繍入りのハンカチは、ジークフリートのために作ったものだった。それをジークヴァルトに大事に使われていると思うと、リーゼロッテは良心の呵責を感じずにはいられなかったのだ。

(新しくプレゼントして、前のは返してもらおう)

 そう思ったリーゼロッテは、空いた時間をみては刺繍を刺していた。小鬼の影響がないせいか、とても順調にすすんでいる。刺繍がうまく刺せないでいたのも、やはり異形のせいだったのだ。

 エラにも相談して黒い馬のデザインにしたのだが、エラ監修のもと、自分でもなかなかの出来栄えに仕上がってきていた。

 刺繍をすすめていた午後のある日、家令のダニエルがピクニックは明日行けることになった旨を伝えに来た。ようやく義父のフーゴの時間が空いたとのことで、明日は天気もよさそうなので、急遽決まったことを告げられる。

「まあ、うれしいわ」

 刺繍の手を止めたリーゼロッテは、ふと、ジークヴァルトにピクニックの日程が決まったら、手紙で連絡するよう言われていたことを思い出した。

 昨日も贈り物が届いたので、午前中にお礼の手紙を送ったばかりである。下手したら、あと数時間で返事の手紙が来るかもしれない。

< 399 / 678 >

この作品をシェア

pagetop