ふたつ名の令嬢と龍の託宣
(ピクニックの件も、報告しないと後がうるさいわよね)

 リーゼロッテは仕方なしに、今日中に手紙をもう一通書いて送ることにした。

 伝令を務めている使用人にはいつも申し訳なく思ってしまうのだが、時間外労働としてしっかり報酬は払うよう義父にはお願いしている。

 文机に向かい、手紙をしたため始める。ここのところは毎日書いているので、書き出しは社交辞令的な文面で、もはやテンプレート化していた。

(この世界にも前略、とか追伸、的な言い回しがあればいいのに)

 貴族の世界では、時節の挨拶からはじまり、まだるっこしい言い回しが常だった。いっそ電報形式でいいのではなかろうか、などど考えてしまう。

『アス、ピクニックニイク。ソノホカモンダイナシ』

(なんて簡潔なの。スマホがあればメールやメッセージアプリで済むのに。電話もないし、異世界はなかなか面倒だわ)

 そんなことを思いながら、手紙を書き始める。とりあえず、明日ピクニックに行くことになったこと、アデライーデに馬に乗せてもらう約束をしたことをしたためて、二通目ということもあり、短めに内容をまとめた。

 夕べは守り石を外して眠る日だったので、今日は少し寝不足気味だ。力を解放した日はいつもへんてこな夢を見るので、朝、目覚めてもあまり寝た気がしなかった。

 注意力が散漫になり、手紙の文章もいまいちうまく書けなかったが、時間もないので仕方ないとあきらめる。

 やはりテンプレート的に結びの文を書いて封をしたリーゼロッテは、急いで家令のダニエルに今日中に公爵家に届くよう手紙を託した。

(今日は刺繍もおしまいにして、早めに寝た方がよさそうね。興奮して眠れなくならないといいけれど)

 明日のピクニックのことで気持ちがいっぱいで、気もそぞろなリーゼロッテであった。

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