ふたつ名の令嬢と龍の託宣
     ◇
 翌朝、ピクニックに行く準備が整って、家族でエントランスのホールに集まっていた。まだ午前中、早い時間だ。

 義父のフーゴとルカ、アデライーデは馬で、リーゼロッテ・義母のクリスタ、エラの女性陣は馬車で移動することになっていた。行先は、屋敷からほど近い丘で、今の時期は花が見ごろらしくその場所が選ばれた。

「リーゼロッテはわたしの馬で行く?」

 騎士服のアデライーデにそう言われ、リーゼロッテは瞳を輝かせた。

「はい! ……ですが念のため、馬が乗せてくれるか確かめてみてもよろしいですか?」

 乗馬に関しては、家長のフーゴからは許可を取ってあった。フーゲンベルク領の馬はやはり有名らしく、アデライーデなら馬の扱いは間違いないだろうとフーゴは快く許可してくれた。

 アデライーデの愛馬は、葦毛の優しい瞳をした馬だった。

「後ろから近づいたりはしないでね。馬は視野が広いけど、真後ろは死角で蹴られることもあるから」

 手綱を持ったアデライーデにそう言われ、リーゼロッテは斜め前方からゆっくりと馬に近づいた。馬が興奮する様子はなかったが、リーゼロッテは緊張していた。

 その大きな顔にそうっと手を差し伸べる。馬はリーゼロッテの手のにおいをかいだ後、そっとその頬をすり寄せた。リーゼロッテは反応を見ながら馬の頬をそっとなでた。

「アデライーデ様、触らせてくれましたわ」

 花が開いたように笑顔を見せるリーゼロッテに、アデライーデも自然と笑顔になる。

「大丈夫そうだからこの馬に乗っていく?」

 アデライーデの提案に、リーゼロッテは二つ返事で頷いた。

< 402 / 678 >

この作品をシェア

pagetop