ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 記憶をたどると、小さい時にそんなことを言ったような記憶もある。

 何も特産のないダーミッシュ領を嘆いていたフーゴを見て、目の前に掃いて捨てるほど咲いている花があったので香水でも作ってみてはと軽い気持ちで言ったのだ。

 転生令嬢ものにあるような香水とかコスメとかを作ってしまうチートにあこがれたが、自分の持つ日本の知識は全くと言っていいほど役に立たなかった。

(いやだって、ふつうコスメとかドラッグストアで買うでしょう。キャン〇イクとか、ちふ〇とか、セザ〇ヌとかコスパのいいものいっぱいあるし)

 香水などは自分で使ったことがあったかどうかも怪しいくらいだ。

 香りのいい花が無駄に咲いているのを見て香水でもと思ったのだが、実際に香水の作り方が分かるわけでもない。それが製品化したというなら、子供の思いつきを形にした、領地の技術者の努力の賜物だろう。 

「まあ。子供の戯れを形にできるなんて。領地のみなのおかげですのね」

 リーゼロッテは自領の産業のことなど、まったく気に留めていなかったことを恥ずかしく思った。領民が汗水流して働いているからこそ、今の自分の生活があるというのに。

 そのことをフーゴに話すと、フーゴは驚いたように言った。

「何を言っているのだ。可愛いリーゼの助言があったからこそ、今の領地があるのだよ。領民はみなそのことを承知しているし、リーゼは領民にとっては富をもたらしてくれた奇跡の妖精なのだから」

 妖精、というキーワードにリーゼロッテはピクリと反応した。

「なぜ、妖精なんですの?」

 リーゼロッテのその問いに、フーゴは満面の笑みで答えた。

「それは、リーゼが自分で言ったのだよ。当時三つだったリーゼが香水なんて突然言い出すものだから、どこでそんなことを知ったのか聞いたら、自分は妖精の生まれ変わりでその記憶が残っていると」

 その答えに、リーゼロッテはぐふっと脳内で声を上げていた。妖精呼ばわりの元凶は自分であったのか。

(そう言えば、子供のころは脳内突っ込みが外にもれ出てしまうこともあったけ……)

 小さいときはもれ出た脳内突っ込みを、妖精という言葉でごまかしていたような気がしなくもない。今の年齢でそれが通用するはずもなく、今後は今まで以上に気をつけようと誓ったリーゼロッテだった。

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