ふたつ名の令嬢と龍の託宣
驚いて視線を戻すと、リーゼロッテの口に何かを押し込んだジークヴァルトの指が、ゆっくりと離れていくのが目に入った。
(この前もらったショコラのお菓子だわ!)
お礼の手紙に、その菓子が一番好きだと書いた気がする。
口どけのいいチョコレートが、口内に広がって甘くゆっくりと溶けていく。甘酸っぱい果実のソースがとろりと出てきて、程よい酸味がその甘さにアクセントを与えている。
リーゼロッテは思わず目を閉じてその味を堪能してしまった。あまりの美味しさに、ほう、とため息をつく。
(って、そうじゃなくて)
はっと我に返り、早く膝から降りなくてはと思った瞬間、ジークヴァルトが再び菓子を差し入れてきた。丸くて小さなショコラを押し込むとき、ジークヴァルトの親指がリーゼロッテの唇にふにと触れた。
(ヴァルト様の指が……)
唇に残る甘くしびれるような感触に驚いて、ふたつ目のチョコは味がわからないまま、口の中であっという間に溶けてなくなった。
そんなリーゼロッテを気にする様子もなく、ジークヴァルトは自分の親指についた溶けたチョコをじっと見つめている。しばらく考え込んだ様子だったジークヴァルトが、その指先のチョコをぺろりと舐めとった。
「甘いな」
眉間にしわを寄せてそう言うと、「菓子はもう終わりだ」とリーゼロッテに向かって言った。
(この前もらったショコラのお菓子だわ!)
お礼の手紙に、その菓子が一番好きだと書いた気がする。
口どけのいいチョコレートが、口内に広がって甘くゆっくりと溶けていく。甘酸っぱい果実のソースがとろりと出てきて、程よい酸味がその甘さにアクセントを与えている。
リーゼロッテは思わず目を閉じてその味を堪能してしまった。あまりの美味しさに、ほう、とため息をつく。
(って、そうじゃなくて)
はっと我に返り、早く膝から降りなくてはと思った瞬間、ジークヴァルトが再び菓子を差し入れてきた。丸くて小さなショコラを押し込むとき、ジークヴァルトの親指がリーゼロッテの唇にふにと触れた。
(ヴァルト様の指が……)
唇に残る甘くしびれるような感触に驚いて、ふたつ目のチョコは味がわからないまま、口の中であっという間に溶けてなくなった。
そんなリーゼロッテを気にする様子もなく、ジークヴァルトは自分の親指についた溶けたチョコをじっと見つめている。しばらく考え込んだ様子だったジークヴァルトが、その指先のチョコをぺろりと舐めとった。
「甘いな」
眉間にしわを寄せてそう言うと、「菓子はもう終わりだ」とリーゼロッテに向かって言った。