ふたつ名の令嬢と龍の託宣
(舐めた! 舐めたよこの人!)
二の句を告げられずにリーゼロッテが口をぱくぱくしていると、「残りは屋敷に届けてある」とつけ加えて、ジークヴァルトはリーゼロッテの頭をポンポンとあやすようにたたいた。
まるでお菓子がなくなって拗ねている子供のように扱われて、リーゼロッテはどこをどう突っ込めばいいのかわからなくなった。お礼を言う場面なのかもよくわからなかったが、リーゼロッテは「ありがとうございます」とだけ小さな声で返した。
(この世界に間接キスの概念なんてないのよ)
動揺を抑えつつ、ジークヴァルトの行動はただの餌づけであると結論づけた。子供の扱いに困っているから、この男はいつもおかしな行動をとるのだ。
「あの、ヴァルト様。わたくしもう大丈夫です」
そう言って立ち上がろうとすると、じっと見下ろしていたジークヴァルトが、リーゼロッテの頬に手を添えた。そのまま親指ですいと下唇をなぞり、リーゼロッテの唇に残っていたチョコをぬぐい取った。
一瞬何が起きたかわからずに、リーゼロッテは指の感覚が残る唇をかすかにふるわせた。ジークヴァルトの親指につく、ぬぐい取られたチョコを凝視する。
ジークヴァルトはなぞった親指の腹を、先ほど同じようにぺろりと舐め、「やはり甘いな」とつぶやいた。
「――……っ!」
二の句を告げられずにリーゼロッテが口をぱくぱくしていると、「残りは屋敷に届けてある」とつけ加えて、ジークヴァルトはリーゼロッテの頭をポンポンとあやすようにたたいた。
まるでお菓子がなくなって拗ねている子供のように扱われて、リーゼロッテはどこをどう突っ込めばいいのかわからなくなった。お礼を言う場面なのかもよくわからなかったが、リーゼロッテは「ありがとうございます」とだけ小さな声で返した。
(この世界に間接キスの概念なんてないのよ)
動揺を抑えつつ、ジークヴァルトの行動はただの餌づけであると結論づけた。子供の扱いに困っているから、この男はいつもおかしな行動をとるのだ。
「あの、ヴァルト様。わたくしもう大丈夫です」
そう言って立ち上がろうとすると、じっと見下ろしていたジークヴァルトが、リーゼロッテの頬に手を添えた。そのまま親指ですいと下唇をなぞり、リーゼロッテの唇に残っていたチョコをぬぐい取った。
一瞬何が起きたかわからずに、リーゼロッテは指の感覚が残る唇をかすかにふるわせた。ジークヴァルトの親指につく、ぬぐい取られたチョコを凝視する。
ジークヴァルトはなぞった親指の腹を、先ほど同じようにぺろりと舐め、「やはり甘いな」とつぶやいた。
「――……っ!」