ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 公爵領で練習をさせてもらえるだろうか?

(めざせ、暴れ〇坊将軍ね。砂浜で走れたら完璧だけど)

 脳内で軽快なBGMが流れ出すが、ブラオエルシュタインは四方を山に囲まれている海のない国だ。砂浜を駆け抜けるのは無理そうだと、リーゼロッテはとても残念に思った。

「却下だ」

 そんなリーゼロッテの思いを打ち砕くように、ジークヴァルトが即答する。

「まあ、なぜですの? わたくしもアデライーデ様のように颯爽(さっそう)と馬を走らせてみたいですわ」
「却下だ、馬にはオレが乗せてやる」

 そう言うと、ジークヴァルトは少しだけ馬の速度を上げた。

 リーゼロッテの頬が、重力に従ってジークヴァルトの胸に押し付けられる。リーゼロッテはそのままジークヴァルトに体を預けて、力を抜いた。

 ジークヴァルトが自分を落とすことはないだろう。妙な安心感がそこにはあった。

「ヴァルト様は、本当に過保護ですわ」

 仕方ないとばかりにリーゼロッテは、柔らかく淑女の笑みをその口元に浮かべた。

< 431 / 678 >

この作品をシェア

pagetop