ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 そんな二人のやり取りを見ていた使用人たちは、みなで目くばせし合っていた。

「「「エラの言っていたことは本当だった!!!」」」

 公爵様の表情と口調はそれはそれは恐ろしいものに感じたが、その魔王のような公爵の前でお嬢様は怯えることもなく、可愛らしくその頬を膨らませている。

 背筋が凍るほどの鉄面皮で地獄の底から聞こえるような恐ろしい声音のジークヴァルト相手に、リーゼロッテは全くの平常運転だ。それどころか表情豊かでいつも以上に輝いて見える。

「「「お嬢様、マジ天使!!!」」」

 暗黒の魔王の前で無邪気に微笑む妖精に、使用人たちは一同ふやけた顔になっていた。そんなふたりのやり取りを、ダーミッシュ夫妻もニコニコと見守っている。

 その中でひとり、(けわ)しい表情でジークヴァルトを(にら)む人物がいた。
 義弟(おとうと)のルカである。

 そんな義弟の視線に気づいたリーゼロッテは、自然な動きでジークヴァルトの元を離れルカの近くに歩み寄った。

 ルカはリーゼロッテの婚約者が話題になると、いつもちょっぴり不機嫌な顔をする。そんな態度を取られると、姉としては思わず顔がにやけてしまうというものだ。

 いつもなら弟のかわいい嫉妬にリーゼロッテのブラコン魂がキュンキュン揺さぶられてしまうところだが、ジークヴァルト本人に不敬な態度をとるのはいただけない。そう思ったリーゼロッテは、努めて明るい声でルカに話しかけた。

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