ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「ルカ!」

 リーゼロッテがルカに駆け寄り飛びつくように抱きついた。

「ルカ、怪我はない? 痛いところはない?」

 ルカの頭から腕、体と、上から下まで確かめるようにペタペタと触っていく。

「大げさです、義姉上」

 ルカはリーゼロッテを引き離すように距離を開けた。

「離れてください。せっかくのドレスが汚れてしまいます」

 ジークヴァルト様に頂いたお気に入りでしょう?と付け加えると、ルカは笑顔でジークヴァルトを見あげた。

「ジークヴァルト様、また今度、手合わせをしていただけますか?」
「ああ」

 ジークヴァルトの返事にルカは「ありがとうございます!」と弾む声で返した。

(わたしのルカが……!)

 自分そっちのけでジークヴァルトに天使の笑顔を向けるルカを見て、リーゼロッテは危機感を募らせた。

< 442 / 678 >

この作品をシェア

pagetop