ふたつ名の令嬢と龍の託宣
(ルカを取られて敵認定なんて……。ヴァルトも前途多難だわ)

「おもしろすぎてたまらないわね」

 思わず漏れたその言葉に、リーゼロッテはアデライーデを見上げ、こてんと小首をかたむけた。そんな様子がまた愛らしすぎる。

 アデライーデはこれ見よがしにリーゼロッテの頭に頬ずりした。それをジークヴァルトが恨みがましそうに見つめている。ルカがうれしそうにジークヴァルトに話しかけ、そんなルカの様子にリーゼロッテは涙目だ。

 なんともカオスな四角関係の誕生だった。

 そんなやり取りを遠巻きに見ていた使用人のひとりがぽつりとつぶやいた。

「お嬢様といい、ルカ坊ちゃんといい、旦那様も、奥様も……。あの公爵様相手に、なぜあんなに和やかな雰囲気でいられるんだ……?」

 その居合わせた使用人も護衛の騎士も、みな同じことを思った。

「「「ダーミッシュ一家、マジ最強!!!」」」

 その認識は、ピクニックに参加した者の土産話によって、屋敷の者全員に浸透していくのであった。

< 446 / 678 >

この作品をシェア

pagetop