ふたつ名の令嬢と龍の託宣
(食べている量は、海賊王になれそうな勢いなのに、どうして成長しないのかしら)

 十四歳にしては発育が遅い体に、リーゼロッテは秘かにコンプレックスを感じていた。

 日本での記憶があって、異世界の令嬢に転生したというのに、チートらしきものがみじんも発生しない。外出はおろか、部屋から出るのも一苦労するのだ。

 この世界がよくあるラノベのように、乙女ゲームの世界だったとしても、ゲームをやっていた記憶はなかった。役どころも分からない。

 ベタに、悪役令嬢転生ものだったとして、外出もままならない自分にそんな大役が務まるだろうか。死刑とか、国外追放とか、お家お取りつぶしとか、シャレにならないが。

(でも、婚約破棄ものなら、バッチ来いね)

 リーゼロッテは自分にふりかかった婚約話を、叶うことなら辞退したいと思っていた。

(まあ、無理なんだけど。何せ王命だし)

 リーゼロッテにできることといえば、せいぜい脳内突っ込みを繰り広げることくらいである。

(こころやさしい主人公さん、どうか婚約者様の心をサクッと奪っちゃってください)

 まだ見ぬ乙女ゲームの主人公に思いを馳せて、現実逃避をはかるリーゼロッテだった。

 
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