ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「それにしても、リーゼロッテ様は異形の者に大人気ですねぇ」

 マテアスが感心した口調でリーゼロッテが座るソファの横を糸目で見やった。つられてリーゼロッテもそちらに視線を向けると、そこにはドロドロでデロデロの異形の塊がうそうそとうごめいていた。

 誕生日を迎えてから異形の見え方も変わってきた。より鮮明に、よりリアルに。ドロデロ系はもはやスプラッタだ。

「ふおっ」

 異形は一定の距離を保っていたが、目が合うとじりじりとリーゼロッテににじり寄ってくる。リーゼロッテは王城でいつもそうしていたように、反射的に隣のジークヴァルトにしがみついた。

「おお、小鬼もたまにはいい仕事しますねぇ」

 マテアスが先ほどエマニュエルが淹れた紅茶をジークヴァルトの前に置きながら、のんきな声で言った。冷めた紅茶はジークヴァルトの飲み頃だ。

 浄化ができないリーゼロッテは小鬼の格好の餌食だった。漏れ出ている力に惹かれるのか、特に形の取れない力の弱い異形――要はドロデロ系がリーゼロッテの周りには集まりやすかった。

 リーゼロッテは異形のグロさにおののきつつ、ジークヴァルトのシャツをくしゃりと掴んだ。

 ジークヴァルトはリーゼロッテの手首を掴んで自分のシャツから引きはがした。次に脇に手を差し入れたかと思うと、そのままリーゼロッテをひょいと持ち上げ、自分が背もたれになるようにリーゼロッテを膝の上に座らせて、両腕で囲むように抱えなおす。

「じ、ジークヴァルト様!?」

 リーゼロッテの動揺をスルーして、ジークヴァルトはリーゼロッテの両手をまとめて自身の手で包み込んだ。

「感じていろ」

< 471 / 678 >

この作品をシェア

pagetop