ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「エラ、お帰りなさい!」

 奥の部屋からリーゼロッテが顔を出した。その笑顔を見てエラはほっとした顔をする。

「リーゼロッテお嬢様、遅くなり申し訳ありません」
「いいのよ。ここのお屋敷は広いですもの。それより刺繍教室は楽しかった?」
「はい、お嬢様。みな素直な子が多くて」
「まあ、わたくしも負けていられないわ。ハンカチの刺繍がもう少しなのだけど、うまくできないところがあって。あとでエラにみて欲しいの」
「もちろんです、お嬢様!」
「その前にお茶にしましょう。エマ様が淹れてくださったから」

 たわいもない会話だが、リーゼロッテのそばが一番落ち着くとエラは自然と笑顔になった。リーゼロッテも気負いなくエラに甘えている。エマニュエルはそんなふたりを微笑ましそうにみつめていた。

(ふたりの絆を超えるのは、なかなか骨が折れそうね)

「では、わたしはこれで失礼いたしますね」

 エマニュエルは一礼するとリーゼロッテの部屋を出た。

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