ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「浄化しようとは思わないの?」
「それがカークはなかなかやっかいでして。昔は何度も(はら)おうとしたらしいのですが、頑として浄化されないのです。たまに腕に覚えのあるものが挑戦するのがお約束になっていますが、今ではすっかり放置状態なのですよ。基本、立っているだけで害はない異形ですし」

 すこぶる邪魔ですがねぇ、とマテアスは糸目でカークを見やった。

「ヴァルト様でも祓えないのかしら?」
「そうですねぇ。(あるじ)は子供の頃からカークに興味なさげでしたし、必要ないと思ったことには指一本動かしませんから。できてもやらない、と言ったところでしょうか」

 確かに無駄を嫌うジークヴァルトが、いたずらに腕試しのようなことはしなさそうだ。マテアスは誰よりもジークヴァルトの性格を知り尽くしているのだろう。リーゼロッテはなるほどと頷いた。

(ヴァルト様の破天荒ぶりに困ったときはマテアスに相談するのがいいかしら)

「ですが主は、リーゼロッテ様が可愛くお願いなさったら、意気揚々と祓ってみせますよ」
「え? いいえ、そのようなことはないはずだわ」

 ジークヴァルトに自分の希望が、今までどれだけ聞き届けられただろうか? やはりマテアスは当てにならないとリーゼロッテはふるふると首を振った。

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