ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 ――守りたい、守りたかった、この命に代えても、守りたかった、守りたい、守りたい、守りたい

 純粋な思いだけが膨れ上がっていく。それは眩いくらいで、リーゼロッテの心の奥を刺激する。

「今からでも遅くはないわ。思い出せないのなら、新しく探しましょう? あなたが守りたいと思える守るべきものを」

 リーゼロッテの言葉に、カークの思いが揺れる。

「でもきっとここでは見つからないわ。このまま邪魔者扱いされて、ふてくされていてもつらいだけでしょう?」

 リーゼロッテはカークの握りしめたこぶしに手を伸ばした。触れることはできないとわかっていたが、包み込むように手を置いてみる。

「わかるわ。意地を通して引っ込みがつかなくなることって誰にでもあるもの。でも、カーク。あなたはもう自分を許してあげてもいいと思うの。だから、ここから動いてみない? あなたの求めるものがみつかるかもしれないわ」

 カークの握られたこぶしがぴくりと動いた。それはゆっくりとほどけて、リーゼロッテの小さな手のひらと重なった。

「行きましょう。とりあえず、ここではないどこかへ」

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