ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 一度も会いに来るそぶりを見せない婚約者は、爵位を継いでからというもの、月に最低でも一度、多くてニ度三度と、リーゼロッテに贈り物をするようになった。公爵なりに、婚約者に気を遣っているのだろうが、正直、ありがた迷惑である。

 お礼と共に、気を遣わなくてよいとそれとなく手紙に書いても、「問題ない」という簡素な一言で、かわらず贈り物は届けられていた。

 ドレスなど着ていく当てもないのだから、嫌味としか思えなくなってくる。サイズは、ダーミッシュ伯爵家から情報提供しているようである。スリーサイズが相手に駄々洩れなのも、ちょっと落ち込む原因であった。

 最も、公爵はリーゼロッテのドジさ加減を知らないだろうから、この事実を知ったときに、自分が貧乏くじを引いたことに気づくのだろう。

(これって婚約破棄への第一歩かも……?)

 しかし、婚約が王命である以上、仮面夫婦となるだけかもしれない。

(……お世継ぎは、よそで作ってくれないかしら)

 とてもではないが口にだせないようなことを思ってしまう。あの魔王のような黒いモヤモヤをまとう人間と、健全な夫婦生活など営めようか。

(いや無理無理無理無理……)

 なにしろあの黒いモヤは、もの〇け姫に出てくるタタリ神のような様相だった。夜の闇よりも漆黒で、うねうねと波打ち肌が粟立つほど禍々しく……。

 今思い返しても嫌悪感がハンパない。生理的に無理、いや本能的に絶対無理だ。

< 50 / 678 >

この作品をシェア

pagetop