ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 静寂がおちる中、ドンっという振動が突如、部屋の中に響き渡った。

 全身を震わすような衝撃波にリーゼロッテは飛び上がり、反射的に隣のジークヴァルトにしがみついた。

 ジークヴァルトの腕の中から部屋を見やると、部屋中の物が音を立てて震えている。

 テーブルの上の小物はもちろん、執務机の書類、壁にかかる時計、飾られた花瓶や絵画に至るまで、ありとあらゆる物が飛び跳ねるようにガタガタと揺れていた。

(じ、地震!?)

 いや、違う。揺れているのはこの部屋の中だけのようだ。
 執務室の窓の外を見ると、窓ガラスは震えているが外にいる使用人たちは、普段通りに仕事にいそしんでいる様子が伺えた。

「ヴァルト様っ」

 リーゼロッテはジークヴァルトの背に手を回し、シャツを握りしめるように抱き着いた。

 ジークヴァルトが応えるようにリーゼロッテの背に回した手に力を入れる。するとそれに呼応したように、部屋中がガタガタと揺れ大きな音を立てた。

「ひゃあぁ」

 あまりの事態にリーゼロッテがさらにしがみつく。領地の屋敷でも似たようなことが日々起こっていたが、ここまで部屋中の物がひっくり返るほどの騒ぎはなかったはずだ。

「こ、これもわたくしのせいなのですか?」
「いや、お前のせいではない。確かに異形が騒いでいるが」

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