ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「いえ、ヴァルト様は何もされていませんわ。ですがわたくしは」
 
 ジークヴァルトは執務机で仕事をしていただけだ。リーゼロッテは異形の浄化に集中していたので、また自分が何かをやらかしたのではと戦々恐々となった。

「これは、フーゲンベルク家の呪いなのです」

 エッカルトの言葉にリーゼロッテの涙がぴたりと止まった。

「フーゲンベルク家の……呪い?」
「はい。ですからリーゼロッテ様のせいなどではございません。どうぞご安心ください」

 呪いだから安心しろと言われても、戸惑いしかおこらない。

「ロミルダはリーゼロッテ様をお部屋にお連れして。エラ様にもお戻りになっていただきましょう」

 エッカルトのその言葉に頷いて、ロミルダはリーゼロッテを連れて執務室を出ていこうとする。

「でも……」

 リーゼロッテが躊躇(ちゅうちょ)しながら振り向くと、ロミルダがやさしく背中を押した。

「片付けもございますし、ここは危のうございます。何、エッカルトに任せておけば大丈夫でございますよ」

 ジークヴァルトの顔を伺うが相変わらずの無表情である。リーゼロッテは何が何やらわからぬまま、執務室を後にした。

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