ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「旦那様、分かっていてやられましたな?」
「奴らの線引きを確認したまでだ」
「なるほど。それで確認はできたわけですな」
「ああ」

 エッカルトの静かな問いに、ジークヴァルトは無表情で返した。

 フーゲンベルク家を継ぐ者は、代々龍の託宣を受けてきた。国を()べる王家の血筋とは別に、フーゲンベルク家には龍により課せられた宿命があるのだ。

「マテアスも知っての通り、旦那様はフーゲンベルク家を継ぐ者として異形に狙われ続けてきた。そして、これから授かるであろう御子も同じ運命を課せられる。ゆえに、その御子の母君となるリーゼロッテ様も、御子がお生まれになるまで異形に狙われることとなる」

 マテアスは事の次第が分かってきたが、決して分かりたくない事実に目をそらそうとした。

「しかし、リーゼロッテ様は随分と異形に好かれているご様子です」
「リーゼロッテ様はラウエンシュタイン家の血筋の方だ。そうであっても不思議はない。しかし、旦那様がリーゼロッテ様にお近づきになりたいと願ったとき」


 エッカルトはゆっくりと部屋の中を見回した。

「異形の者たちは黙っていられないのだ」
「要するに、ヴァルト様がリーゼロッテ様に(よこしま)な感情を抱くとこうなるってことですよねぇ!?」

 マテアスは部屋の惨状を指さしながら、半ばやけくそのように叫んだ。

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