ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「他にも視える方がいらっしゃるのですか?」
「以前、大奥様が大旦那様の守護者とよくお話しされていました。声だけで姿は視えないとのことでしたが」
「大奥様……?」
『ディートリンデのことだね』
「ディートリンデ様?」
「はい、大奥様のディートリンデ様です」
『ヴァルトの母親だよ』
「ヴァルト様のお母様……」
「ええ。近い将来、リーゼロッテ様のお義母様にもなられますね」
『ジークフリートの託宣の相手だから、リーゼロッテにとっては恋敵(こいがたき)になるのかな?』
「まあ! 恋敵だなんて……ジークフリート様は、わたくしの初恋の方というだけで、今ではいい思い出ですわ」
「え? ……恋敵? 初恋の方……?」
『むきになるところがあやしいなぁ。ディートリンデは怒らせると怖いんだよ?』
「ええ? そんな!」
「あの……リーゼロッテ様……?」

 エマニュエルが訝し気な表情を向けてくる。

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