ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「ハルト様はジークフリート様とヴァルト様、おふたりの守護者なのですか?」
『今はヴァルトだけだよ。オレはフーゲンベルク家の託宣者につく守護者だからね。ジークヴァルトの前は、ジークフリート。その前はジークベルト、あ、ヴァルトのじい様ね。リーゼロッテが託宣の子供を産めば、ヴァルトからそっちに移るんだ』

 どうやら守護者は世襲制で相続されていくらしい。ふと浮かんだ疑問を、リーゼロッテは何気なく口にした。

「ハルト様はいつから守護者をなさっているのですか?」
『うーん、この国ができてからだから、もう八百年以上前からかなぁ』
「八百年っ!?」

 ブラオエルシュタインは、今年で龍歴八百二十八年だ。その間、ジークハルトは守護者としてあり続けたのだろうか。

『ヴァルトが四十七代目の当主だから、リーゼロッテの子供で四十八人目だね。あ、子供の名前はジークなんちゃらはやめない? 何度も同じ名前が使いまわされるから、正直もう飽きてきちゃって。ちなみにジークフリートは九人目で、ジークヴァルトは五人目だよ』

 リーゼロッテは一度開きかけた口をつぐんだ。どこをつっこめばいいのかわらなくなったのだ。

『ちなみにリーゼロッテの所、ラウエンシュタインの守護者は毎回変わるみたい』
「え? そうなのですか?」
『うん。まあ、フーゲンベルク家とラウエンシュタイン家が交わることなんて今まで一度もなかったから、オレも詳しくは知らないんだけどね』

 ジークハルトは宙に浮いたまま肩をすくめた。

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