ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「リーゼロッテ様、わたしは少し所用で出ますが、このままお部屋にいらっしゃいますか?」

 エマニュエルはリーゼロッテのエア会話の合間を見て、ゆっくりと立ち上がった。

「ええ。今日はもうおとなしく部屋にいますわ」
「もし何かありましたら、呼び鈴で侍女をお呼びくださいね」

 そう言い残すと、エマニュエルは邪魔そうにカークを見やってから、その脇をすり抜けて部屋を出ていった。それを黙って見送っていたジークハルトが、不意にくすりと笑った。

『ホント、楽しいことになってるよね』
「カークの事ですか?」
『うん、アレもそうだけど。庭で泣いてる方もおもしろいことになってるね』
「おもしろいも何も、ジョンは変わらず泣いているだけですわ」

 そう言いながらもリーゼロッテは小首をかしげた。

 周りのみなは、カークとジョンを同列に扱うが、そこに違和感を覚える。どちらも異形なのだから、それはまあそうなのかもしれないのだが。

「ハルト様。カークとジョンはどちらも異形の者ですけれど、何かか違うと思われませんか?」
『違うって、どこら辺が違うと思うの?』

 ジークハルトはかつて王城でしたように、リーゼロッテの顔を覗き込んだ。リーゼロッテは考え込むように首をひねった。

「言葉にしづらいのですが……」

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