ふたつ名の令嬢と龍の託宣
おもむろにジークヴァルトは扉の前まで歩みを進めて、カークの前で立ち止まった。
「どけ。邪魔だ」
平坦な声に、カークは横跳びに瞬時に移動した。
「そっちではない。お前の定位置はここだ」
扉の蝶番のある側に移動したカークは、反対側の廊下の壁際を指定された。再び瞬時に移動する。額は相変わらず壁に押し付けられていた。
廊下に出たジークヴァルトは、カークの正面に立ち威圧するように目をすがめた。
「顔はこちらだ。廊下を向け」
くるりとカークは向き直る。自分より幾分背の低いジークヴァルトを前にして、カークはぴーんと背筋を伸ばした。
「一度しか言わない。いいか、よく聞け。お前の役目はこの部屋の護衛だ。まずひとつ。この部屋の前を通る者をすべて記憶しろ。不審な者がいたらオレに知らせること。念を飛ばせばそれでいい。次に、ダーミッシュ嬢が部屋から出た場合、その後を付いて行け。ただしその際、ダーミッシュ嬢に半径二メートルは近づくな。彼女が部屋に戻るまでの護衛がお前の任務だ。戻ったらまた部屋を護衛しろ。以上だ、わかったな?万が一守れなかったときは……」
ジークヴァルトの能面のような表情を前に、言われなくともといった体でカークはこくこくとしつこいくらいに頷いた。
「どけ。邪魔だ」
平坦な声に、カークは横跳びに瞬時に移動した。
「そっちではない。お前の定位置はここだ」
扉の蝶番のある側に移動したカークは、反対側の廊下の壁際を指定された。再び瞬時に移動する。額は相変わらず壁に押し付けられていた。
廊下に出たジークヴァルトは、カークの正面に立ち威圧するように目をすがめた。
「顔はこちらだ。廊下を向け」
くるりとカークは向き直る。自分より幾分背の低いジークヴァルトを前にして、カークはぴーんと背筋を伸ばした。
「一度しか言わない。いいか、よく聞け。お前の役目はこの部屋の護衛だ。まずひとつ。この部屋の前を通る者をすべて記憶しろ。不審な者がいたらオレに知らせること。念を飛ばせばそれでいい。次に、ダーミッシュ嬢が部屋から出た場合、その後を付いて行け。ただしその際、ダーミッシュ嬢に半径二メートルは近づくな。彼女が部屋に戻るまでの護衛がお前の任務だ。戻ったらまた部屋を護衛しろ。以上だ、わかったな?万が一守れなかったときは……」
ジークヴァルトの能面のような表情を前に、言われなくともといった体でカークはこくこくとしつこいくらいに頷いた。