ふたつ名の令嬢と龍の託宣
そんな時、エラが部屋に戻ってきた。室内に入るなりエラは、口を開くより先にリーゼロッテに駆け寄った。
「お嬢様、何かございましたか!?」
「ええ、わたくしの浅慮からジークヴァルト様にご迷惑をおかけしてしまって……」
(さすがエラ様ね。何を言わずともリーゼロッテ様のご様子ひとつで異変を察知するなんて)
膝をついてリーゼロッテの手を取りながら、エラは事の次第を頷きながら聞いていた。もちろん守護者やカークのことは話題に出さなかったが、リーゼロッテは包み隠さずエラに胸中を打ち明けている。
信頼関係が見て取れるが、エラは大事にするあまり、リーゼロッテに対して過剰に過保護なのだろう。エラに依存したままでは、今後もリーゼロッテに弊害が出るに違いない。公爵家での環境が、ふたりにとって良い方向へ作用するといいのだが。
(それにしても、エラ様のことも放置はできないわね……)
無知なる者であるエラの争奪戦が、使用人たちの間で苛烈を極めている。貴族であることを鼻にもかけないエラは親しみやすく、男女問わず益々モテモテになっていた。
抜け駆け禁止とばかりにお互いがけん制し合っているため、危うくも均衡を保っているが、女性はともかく男性陣からは熱列なラブコールが激化している。
男爵令嬢であるエラに強引に言い寄る使用人はいなかったが、それとなくアプローチする者は大勢いた。それに使用人の中に貴族の子弟がいないわけではない。身分的につり合いが取れる者なら、強引な手口で迫ることもあり得るだろう。
リーゼロッテとは違い、そこのところはエラはそつなく上手にかわしているようだが、何かがあってからでは遅いのだ。
エラはリーゼロッテと共にダーミッシュ家から預かった大事な客人だ。エッカルトやマテアスがうまくやっているだろうとは思うのだが、一抹の不安はぬぐい切れなかった。
リーゼロッテとエラの会話に耳を傾けながら、エマニュエルはそんなことを考えていた。
「お嬢様、何かございましたか!?」
「ええ、わたくしの浅慮からジークヴァルト様にご迷惑をおかけしてしまって……」
(さすがエラ様ね。何を言わずともリーゼロッテ様のご様子ひとつで異変を察知するなんて)
膝をついてリーゼロッテの手を取りながら、エラは事の次第を頷きながら聞いていた。もちろん守護者やカークのことは話題に出さなかったが、リーゼロッテは包み隠さずエラに胸中を打ち明けている。
信頼関係が見て取れるが、エラは大事にするあまり、リーゼロッテに対して過剰に過保護なのだろう。エラに依存したままでは、今後もリーゼロッテに弊害が出るに違いない。公爵家での環境が、ふたりにとって良い方向へ作用するといいのだが。
(それにしても、エラ様のことも放置はできないわね……)
無知なる者であるエラの争奪戦が、使用人たちの間で苛烈を極めている。貴族であることを鼻にもかけないエラは親しみやすく、男女問わず益々モテモテになっていた。
抜け駆け禁止とばかりにお互いがけん制し合っているため、危うくも均衡を保っているが、女性はともかく男性陣からは熱列なラブコールが激化している。
男爵令嬢であるエラに強引に言い寄る使用人はいなかったが、それとなくアプローチする者は大勢いた。それに使用人の中に貴族の子弟がいないわけではない。身分的につり合いが取れる者なら、強引な手口で迫ることもあり得るだろう。
リーゼロッテとは違い、そこのところはエラはそつなく上手にかわしているようだが、何かがあってからでは遅いのだ。
エラはリーゼロッテと共にダーミッシュ家から預かった大事な客人だ。エッカルトやマテアスがうまくやっているだろうとは思うのだが、一抹の不安はぬぐい切れなかった。
リーゼロッテとエラの会話に耳を傾けながら、エマニュエルはそんなことを考えていた。