ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 主と守護者の関係は、あの日からぎくしゃくしたままのようだ。

 幼少の頃から、ジークヴァルトが自身の守護者と会話をしていたのは、マテアスはもちろん知っていた。だが、姿が見えない守護者の存在など、今までさして気にも留めていなかった。

 最近では、ジークヴァルトは守護者と会話をしているそぶりなど全くみせなかったので、正直なところマテアスはその存在をすっかり忘れていたくらいだ。

 しかしリーゼロッテの様子と主の態度をみるからに、主と守護者の関係は随分と前からうまくいってなかったようだ。マテアスは今さらながらにそれに気づかされた。

 誰よりもジークヴァルトの側にいて、全てを理解しているつもりでいた。それなのに。

「自分もまだまだ……ということですねぇ」

 無意識に漏れた言葉に、リーゼロッテが心配げな視線を寄越した。目が合って、マテアスがにこりと笑顔を返すと、リーゼロッテは安心したように微笑みを浮かべた。

 すかさず横からジークヴァルトの殺気が伝わってくる。

(なんとも心の狭い)

 マテアスは呆れるように主をちらっと見やってから、「そろそろ一度休憩にいたしましょうか」と席を立った。

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