ふたつ名の令嬢と龍の託宣
不自然に修復が重ねられたアンティークの調度品。他領の追随を許さない家具職人たちの技術の向上。そして、公爵家自ら立ち上げた、歴史ある家具ブランド。
これらはすべて、異形たちを騒がせては屋敷を破壊する公爵家当主への苦肉の対応策だったのだ。
新しい高級家具など何度も買いかえていては、公爵家と言えど財政を圧迫しかねない。領地経営は領民への生活へ直結するうえ、血税の無駄遣いをするわけにはいかない。
その点、自領ブランドなら低コストで済むし、領地の収入にもなる。先人の努力は、こうして脈々と受け継がれてきたのだ。
ちなみにエッカルトの話では、前公爵であるジークフリートは、直しても直しても、次から次へと屋敷を破壊していく状況だったらしい。
マテアスが子供時分に何度も目撃した騒ぎも、つまりはそういうことだった。ところかまわずディートリンデに迫るものだから、屋敷が壊されまくって頻繁に妻から接近禁止令が下されていたそうだ。
(確かに大旦那様はいまだに大奥様を溺愛なさっていますしねぇ)
まさに、公爵家の呪い恐るべしである。いや、居間や食堂、廊下の端々で劣情を抑えられない歴代当主の節操のなさもどうかと思うのだが。
しかし、マテアスはできる男だ。父親と同じ轍は決して踏まないと強く誓った。何があっても、ジークヴァルトにこれ以上部屋は破壊させまい。リニューアルした執務室を前に、マテアスはもう一度大きく頷いた。
これらはすべて、異形たちを騒がせては屋敷を破壊する公爵家当主への苦肉の対応策だったのだ。
新しい高級家具など何度も買いかえていては、公爵家と言えど財政を圧迫しかねない。領地経営は領民への生活へ直結するうえ、血税の無駄遣いをするわけにはいかない。
その点、自領ブランドなら低コストで済むし、領地の収入にもなる。先人の努力は、こうして脈々と受け継がれてきたのだ。
ちなみにエッカルトの話では、前公爵であるジークフリートは、直しても直しても、次から次へと屋敷を破壊していく状況だったらしい。
マテアスが子供時分に何度も目撃した騒ぎも、つまりはそういうことだった。ところかまわずディートリンデに迫るものだから、屋敷が壊されまくって頻繁に妻から接近禁止令が下されていたそうだ。
(確かに大旦那様はいまだに大奥様を溺愛なさっていますしねぇ)
まさに、公爵家の呪い恐るべしである。いや、居間や食堂、廊下の端々で劣情を抑えられない歴代当主の節操のなさもどうかと思うのだが。
しかし、マテアスはできる男だ。父親と同じ轍は決して踏まないと強く誓った。何があっても、ジークヴァルトにこれ以上部屋は破壊させまい。リニューアルした執務室を前に、マテアスはもう一度大きく頷いた。