ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 一筆書きのように黒髪の女性が描きあがると、ジークヴァルトの輪郭がぶれて、ふわっとジークハルトが浮き上がった。

『だいたいこんな感じ。地味めだけど、まあ清楚系美人かな?』

 絵を指さすと、ジークハルトは満足そうにうなずいた。
「おい」とジークヴァルトがもう一度言ったが、ジークハルトは完全にスルーする。

「まあ、こんな感じの方なのですね。ハルト様、絵がお上手ですわ」

 リーゼロッテが立ち上がり執務机の上をのぞきこむと、その紙に描かれていたのは、浮世絵のような黒髪の女性だった。薄く笑みを浮かべている様がどこか儚げに見える。

(見返り美人みたいね。よー〇やのあぶらとりがみにも似てるかも)

 リーゼロッテは懐かしさに脳内でくすりと笑った。

『ああ、やっぱりおもしろ系だ』
「なんですの? そのおもしろ系って」

 リーゼロッテは首を傾げた。

『聖女って言ったら、だいたいは叡智(えいち)と力を授ける存在だけど……』

 ジークハルトは目を細めながら楽しそうに続けた。

『リーゼロッテの聖女はやる気がないみたい』

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