ふたつ名の令嬢と龍の託宣
◇
「最近、リーゼロッテ嬢の様子はどうなんだ?」
王太子の執務室で執務の傍らハインリヒ王子がジークヴァルトに声をかけた。
「ああ、問題ない、と言いたいところだが、最近は四六時中、力が漏れて出ている。まあ、公爵領にいる間はこの前のような騒ぎにはならないだろうが」
「白の夜会までにはどうにかなりそうなのか?」
「守り石があれば問題ない。それにダーミッシュ嬢自身も今は浄化ができないわけではないし、オレがそばについていれば大ごとにはならないはずだ」
「やはり白の夜会で、ヴァルトにこちらの警護をさせるのは無理か……」
執務の手を止めてハインリヒはつぶやくように言った。
白の夜会とは、年に一度開かれるデビュタントのための舞踏会のことだ。本格的な冬が訪れる前に、王城で催される国内最大級の夜会である。
「まあいい。今年はわたしも夜会には顔を出すだけだ。ヴァルトは心置きなく、リーゼロッテ嬢のそばにいればいい」
「今年は例の彼女とは踊らないのか?」
「ああ。去年まではまだギリギリだったが……いい加減もう無理だろう? 父上には許可は得た。それに今回、カイは義母上にとられてしまったからな」
ハインリヒは肩をすくめてみせた。
カイは王太子直轄の王城騎士という立場だったが、その実、王妃の子飼いの諜報員のようなものだった。ふたりは叔母と甥の関係であるし、そこはもう騎士団の中では暗黙の了解となっている。
自分の警護が手薄の状態で、大勢の人間が入り乱れる夜会に出るわけにはいかない。ましてや令嬢と触れ合ってダンスを踊るなどハインリヒにできるはずもなかった。
「今年は王の後ろでおとなしく控えているさ」
「最近、リーゼロッテ嬢の様子はどうなんだ?」
王太子の執務室で執務の傍らハインリヒ王子がジークヴァルトに声をかけた。
「ああ、問題ない、と言いたいところだが、最近は四六時中、力が漏れて出ている。まあ、公爵領にいる間はこの前のような騒ぎにはならないだろうが」
「白の夜会までにはどうにかなりそうなのか?」
「守り石があれば問題ない。それにダーミッシュ嬢自身も今は浄化ができないわけではないし、オレがそばについていれば大ごとにはならないはずだ」
「やはり白の夜会で、ヴァルトにこちらの警護をさせるのは無理か……」
執務の手を止めてハインリヒはつぶやくように言った。
白の夜会とは、年に一度開かれるデビュタントのための舞踏会のことだ。本格的な冬が訪れる前に、王城で催される国内最大級の夜会である。
「まあいい。今年はわたしも夜会には顔を出すだけだ。ヴァルトは心置きなく、リーゼロッテ嬢のそばにいればいい」
「今年は例の彼女とは踊らないのか?」
「ああ。去年まではまだギリギリだったが……いい加減もう無理だろう? 父上には許可は得た。それに今回、カイは義母上にとられてしまったからな」
ハインリヒは肩をすくめてみせた。
カイは王太子直轄の王城騎士という立場だったが、その実、王妃の子飼いの諜報員のようなものだった。ふたりは叔母と甥の関係であるし、そこはもう騎士団の中では暗黙の了解となっている。
自分の警護が手薄の状態で、大勢の人間が入り乱れる夜会に出るわけにはいかない。ましてや令嬢と触れ合ってダンスを踊るなどハインリヒにできるはずもなかった。
「今年は王の後ろでおとなしく控えているさ」