ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「で、今日は一体何事ですか?」
「テレーズが懐妊したようなの」
イジドーラの言葉に、ハインリヒの表情が真剣なものに変わる。
「テレーズ姉上が?」
「ええ、まだ隣国で正式な発表はされていないのだけれど」
閉じた扇を口元に当てながら、イジドーラは妖艶な笑みを浮かべた。
国交が乏しいとはいえ、第二王女のテレーズが隣国の第三王子に嫁いだこともあり、隣国の情報はつぶさに届くようになっている。
ここブラオエルシュタインでは長い年月、他国との国交は途絶えていた。しかし、前王妃であるセレスティーヌは隣国・アランシーヌの王女だったため、ここ二十年ほどで隣国とだけは少しずつ交流が生まれている。
テレーズがアランシーヌに嫁いだのもその一環で、テレーズは龍の託宣を受けなかったため可能になった縁談だった。
「正式に発表されるのと同時に、テレーズにお祝いを贈りたいのよ。初孫ができたお祝いなのに、他の誰かに先を越されるなんて悔しいじゃない」
そう言いながら、イジドーラはお付きの女官に扇で指示を出す。女官は黙ったまま頭を下げ、手に持っていた箱を恭しくハインリヒに差し出した。
ハインリヒはカイに目配せして、それを女官から受け取らせた。
「中を見ても?」
イジドーラが妖しげな笑みを保ったまま頷くのを確認すると、カイはハインリヒの目の前で箱の蓋を開けて見せた。
「これは……守り石ですか?」
「テレーズが懐妊したようなの」
イジドーラの言葉に、ハインリヒの表情が真剣なものに変わる。
「テレーズ姉上が?」
「ええ、まだ隣国で正式な発表はされていないのだけれど」
閉じた扇を口元に当てながら、イジドーラは妖艶な笑みを浮かべた。
国交が乏しいとはいえ、第二王女のテレーズが隣国の第三王子に嫁いだこともあり、隣国の情報はつぶさに届くようになっている。
ここブラオエルシュタインでは長い年月、他国との国交は途絶えていた。しかし、前王妃であるセレスティーヌは隣国・アランシーヌの王女だったため、ここ二十年ほどで隣国とだけは少しずつ交流が生まれている。
テレーズがアランシーヌに嫁いだのもその一環で、テレーズは龍の託宣を受けなかったため可能になった縁談だった。
「正式に発表されるのと同時に、テレーズにお祝いを贈りたいのよ。初孫ができたお祝いなのに、他の誰かに先を越されるなんて悔しいじゃない」
そう言いながら、イジドーラはお付きの女官に扇で指示を出す。女官は黙ったまま頭を下げ、手に持っていた箱を恭しくハインリヒに差し出した。
ハインリヒはカイに目配せして、それを女官から受け取らせた。
「中を見ても?」
イジドーラが妖しげな笑みを保ったまま頷くのを確認すると、カイはハインリヒの目の前で箱の蓋を開けて見せた。
「これは……守り石ですか?」