ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 箱に入っていたのは、大小様々な楕円形の石だった。くすんだ灰色のそれらは、数にして十個以上はありそうだ。
 石から近しい波動を受けたハインリヒは、これらがかなり良質な守り石だと感じ取っていた。

「テレーズのためにいい石を取り寄せたの。子が無事に生まれるよう、これでお守りになる装飾を作りたいと思って」

 守り石には力を込める人間との相性がある。これらの石は、ハインリヒのために選別された物のようだ。

 試しにひとつ手に取ってみる。軽く握りこんで、ハインリヒは少しだけ力を注いでみた。するとくすんでいた石がうっすらと紫色を帯びていく。

「これは相当良質ですね……」

 良質イコール込められる力が多い、ということだ。この数の石に力を注ぐとなると、少し難儀かもしれない。

「どれくらいかかるかしら?」

 イジドーラは力ある者でも視える者でもない。王妃として、龍の託宣や異形の者の存在を、知識として知っているだけだ。力を使う際の疲労感や体力消耗など、本質的な事は理解などしていないのだろう。

(気軽に言ってくれる)

 内心で毒づきながらも、他ならないテレーズのためだ。異国の地にひとり嫁いでいった姉姫のことを思うと、ハインリヒにはやらないという選択肢はあり得なかった。

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