ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 その頃リーゼロッテは、エラと共に庭が見える公爵家のサロンで、お茶をしながらまったりと過ごしていた。

 いつもなら美しい庭が堪能できる一面のガラス戸は、降りしきる雨のせいで磨りガラスのようにぼんやりと外の景色を映している。
 サロンの片隅ではカークがふたりを遠巻きに見守っていた。ジークヴァルトの言いつけ通りにリーゼロッテについてきたようだ。

「この雨はなかなか止みそうもありませんね、お嬢様」
「ええ、そうねエラ」

 昨日、エラはダーミッシュ領に用事で帰っていたため、リーゼロッテが倒れたことは知らされていない。
 夕べ、雨のせいで予定より遅くエラが公爵家に戻ってきた時には、リーゼロッテは夢の中の住人だった。いつもより早いリーゼロッテの就寝に、庭で散歩中に雨に降られて、念のため早めに休んだと説明されていた。

「昨日は雨の中帰ってくるのはたいへんだったでしょう?」
「ダーミッシュ領を出た頃は小雨程度だったのですが、王都に近づくにつれて雨が激しくなってびっくりいたしました」
「雨で馬車が立ち往生したりしなくてよかったわ」
「はい、本当に。道は混雑してはいましたが、道中は特にトラブルはありませんでしたし、国が河川の整備をしっかりしてくれているおかげか、最近では大雨でも大きな被害はほとんどありませんからね。とはいえ、御者と馬はたいへんだったと思いますが」

 犬のレオンの天気予報は本当によく当たるらしい。この大雨はあと二日は続くだろうとの見立てだった。

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