ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 何やら物騒な発言だが、これには理由があった。歩く破壊神のようなリーゼロッテだが、眠っている間は、きれいさっぱり何事もおきなくなる。

 これは経験則であったが、子供のころ馬車で移動すると、リーゼロッテが目覚めているときは、馬車に物がぶつかったり、虫が飛び込んできたり、脱輪したり、いろいろとトラブルが起こったが、リーゼロッテが眠ってしまうと、不思議なくらい道中が平和になったものだ。日常でも、リーゼロッテが眠っている間は、一切何事も起きることはない。

「だが、食事はどうするんだい? 窮屈なドレスではそれほど食べられないだろうし、王妃様の前でリーゼロッテの可愛いお腹の虫が鳴ったりしやしないか心配だよ」
「王妃様にご挨拶が済んだら、体調がすぐれないことを理由に、すぐお(いとま)するようにいたします。そうすれば、角も立たないでしょう? 実際に具合が悪くなるでしょうし……」

 お腹の虫は令嬢の誇りにかけて鳴らさないようにいたします、とリーゼロッテはつけ加えた。
 具合が悪くなる、の一言に、リーゼロッテ以外の一同が渋面になる。

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