ふたつ名の令嬢と龍の託宣
その時、開いた扉の脇をするりと抜けて、ジークハルトが執務室の中に入ってきた。もちろんマテアス達にはその姿は見えていない。
マテアスはすぐに戻るつもりだったので、扉は開けたままにして廊下へ出た。主とリーゼロッテを密室でふたりきりになどしてはなるものか。
エマニュエルの背中を見送ったマテアスは、すぐさま踵を返して廊下から執務室に戻ろうとした。
とそのとき、開いていた扉がマテアスの目の前でひとりでにぱたんと閉まった。
驚いたマテアスは、慌ててドアに手をかけた。ノブを回すが、鍵がかけられているのか扉は開かない。
「え? ちょっと、何してるんですか? 旦那様!?」
ノブはガチャガチャと耳障りな音を立てるだけでびくともしない。マテアスはドンドンと扉を叩いてジークヴァルトを呼んだ。
「旦那様! あなた何しちゃってるんですか? 今なら怒りませんから、素直にここを開けてください!」
乱暴にドアを叩くが返答はない。無意識にポケットの中を探るが、扉の鍵は執務机の引き出しの中だ。
「くっそ」
舌打ちと共にドアを蹴破ろうとマテアスが足を上げた瞬間、執務室の中の空気がぱんっとはじけた。少なくともマテアスにはそう感じられた。
「なっ!?」
はじけた瞬間、執務室全体が何か大きな力に包まれた。それはジークヴァルトの力でもなく、リーゼロッテのものでもない――強大で圧倒的な力だった。
「一体何が起きているんだ……!?」
自分ひとりで対処できる事態ではない。瞬時にそう判断し、青ざめた顔のままマテアスは急ぎエッカルトを呼びに執務室の前を後にした。
マテアスはすぐに戻るつもりだったので、扉は開けたままにして廊下へ出た。主とリーゼロッテを密室でふたりきりになどしてはなるものか。
エマニュエルの背中を見送ったマテアスは、すぐさま踵を返して廊下から執務室に戻ろうとした。
とそのとき、開いていた扉がマテアスの目の前でひとりでにぱたんと閉まった。
驚いたマテアスは、慌ててドアに手をかけた。ノブを回すが、鍵がかけられているのか扉は開かない。
「え? ちょっと、何してるんですか? 旦那様!?」
ノブはガチャガチャと耳障りな音を立てるだけでびくともしない。マテアスはドンドンと扉を叩いてジークヴァルトを呼んだ。
「旦那様! あなた何しちゃってるんですか? 今なら怒りませんから、素直にここを開けてください!」
乱暴にドアを叩くが返答はない。無意識にポケットの中を探るが、扉の鍵は執務机の引き出しの中だ。
「くっそ」
舌打ちと共にドアを蹴破ろうとマテアスが足を上げた瞬間、執務室の中の空気がぱんっとはじけた。少なくともマテアスにはそう感じられた。
「なっ!?」
はじけた瞬間、執務室全体が何か大きな力に包まれた。それはジークヴァルトの力でもなく、リーゼロッテのものでもない――強大で圧倒的な力だった。
「一体何が起きているんだ……!?」
自分ひとりで対処できる事態ではない。瞬時にそう判断し、青ざめた顔のままマテアスは急ぎエッカルトを呼びに執務室の前を後にした。