ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 掴んだ手首をリーゼロッテの頭上へ持っていくと、ジークハルトは片手で両方の手首をまとめて掴みなおした。空いた手がリーゼロッテの体の線に沿って滑り落ちていく。

 脇から腰にかけてやわらかくなぞっていく手に、リーゼロッテは身を震わせた。
 ジークハルトはそのまま胸元へ手を伸ばし、襟元のラインをゆっくりと指で辿っていった。鎖骨から胸の谷間へ滑り落ちた指先は、胸の真ん中でドレスの内側へと遠慮もなしに侵入していく。

 リーゼロッテの胸の谷間の上部にある龍のあざを、人差し指の腹で柔らかくくるくるとなぞる。突然灯った体の熱に、リーゼロッテの頬は上気し否応なしに息が上がっていく。

「ぁ……は……や、めて」
「中身がヴァルトじゃなくても、体はきちんと反応するんだ」

 あざを執拗に指でなぞりながら、ジークハルトはリーゼロッテの反応にくすりと笑った。

「どうして……こんなひどいことをなさるのですか……」

 龍のあざに触れられ熱くなる体とは裏腹に、リーゼロッテの心は恐怖で固まっていく。じわりと涙が滲み、その緑の瞳が深い輝きを放った。

「ひどい? ねえ、リーゼロッテ。ヴァルトが今日までずっと、どうやって生きてきたか教えてあげようか」

 子供に言い聞かせるようなやさしい声音で、ジークハルトはリーゼロッテの瞳を覗き込んだ。

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