ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 胸元で遊んでいた指が下に降ろされ、無造作にリーゼロッテのスカートをたくし上げた。
 途中までさらされた太ももに、無遠慮な手が滑り落ちる。するりと内ももに回された手のひらは、そのままあっさりと足の付け根にたどり着いた。

 リーゼロッテが短い悲鳴を上げたのと同時に、周囲にいた異形の者たちが一斉に騒ぎ始めた。
 執務室全体がドンっと大きく揺れ、部屋の空気がビリビリと振動する。ありとあらゆるものがガタガタと音を立てて震えだした。

「ほらね。異形たちの恐怖する声が聞こえるだろう?」

 内もものつけ根にゆっくりと指を這わせながら、ジークハルトは耳元でやさしく囁いた。足を閉じようにも体で足を割られてそれも叶わない。

「いやっあっ」

 異形たちが荒れ狂う部屋の中、リーゼロッテはその手から逃れようと死に物狂いで抵抗した。リーゼロッテの悲痛の叫びが、何かが割れる音にかき消されていく。

「ほら、嫌ならもっと本気で抵抗しなきゃ」

 楽しそうな声音で掴んだ手首をさらにきつく締めあげる。リーゼロッテの瞳からは、ぼろぼろと涙がこぼれ落ちた。

「ああ……リーゼロッテの涙はいつ見ても綺麗だね」

 目じりに唇を寄せ、あふれる涙をちろっと舐め取ると、ジークハルトは痛みに触れたかのように一瞬顔をゆがませた。

「……綺麗すぎて、オレたちには甘美な猛毒だ」

 恐怖におののく異形たちが、リーゼロッテの涙に反応している。ジークヴァルトへの畏怖と嫌悪、それにも勝るリーゼロッテへの憧憬と贖罪――
 抗いがたい誘惑が、異形たちをさらに混乱へと導いている。

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