ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 そんな二人の姿は、伯爵家では見慣れた風景だった。小さな騎士と可愛い姫君を見送ったあと、フーゴは悲しそうにため息をついた。

「もうすぐリーゼも十五歳か。ずっとこんな日が続けばいいものを……」

 リーゼロッテが十五歳になったら、いつでも婚姻は可能になる。公爵家が望めば、リーゼロッテをすぐにでも手放さなくてはならないのだ。王家が決めた公爵家との婚姻を、下位の伯爵である自分がどうこうできようはずもなかった。

 クリスタはそっと夫の手を取ると、にっこりと微笑んだ。

「例えお嫁に行ったとしても、リーゼはずっとわたくしたちの大切な娘ですわ」
「ああ、そうだな」

 もともと公爵家の姫だったリーゼロッテを、何の後ろ盾もない一介の伯爵家がまかされたのだ。これほど名誉なことはない。

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