ふたつ名の令嬢と龍の託宣
先日の雨のせいか窓ガラスが泥で汚れて曇っている。マテアスは片手をロープから離し、無造作に白いシャツの袖でガラスの汚れを拭い落とした。
(外が明るいせいか中が見えづらいな……)
マテアスは細い糸目をさらに細めて室内に目を凝らした。
予想通り執務室の中はぐちゃぐちゃだった。
あれだけ異形が騒いでいるのだ。ジークヴァルトがリーゼロッテに欲情を感じているだろうことは想定済みなので、室内の惨状に怒りは覚えても、別段驚きはなかった。
座っていたソファにリーゼロッテの姿はない。だとすると執務机の方か。しかし、この位置からでは自分の机が邪魔で主の机までは見渡せない。
不意に、マテアスの執務机に積まれた書類の影から、ジークヴァルトの背中が見えた。前かがみになって奥の机の方に伏せているように見える。
(くっそ、何をしてるかまではわからないな)
窓枠に掛ける足の位置をずらしながら、マテアスは窓の端へと移動した。ロープが斜めになって不安定だが手と足をつっぱりながらどうにか体勢を取る。
主の背中越しに、一瞬だが白くて細いものがちらっと垣間見えた。
(誰か嘘だと言ってくれ……!)
(外が明るいせいか中が見えづらいな……)
マテアスは細い糸目をさらに細めて室内に目を凝らした。
予想通り執務室の中はぐちゃぐちゃだった。
あれだけ異形が騒いでいるのだ。ジークヴァルトがリーゼロッテに欲情を感じているだろうことは想定済みなので、室内の惨状に怒りは覚えても、別段驚きはなかった。
座っていたソファにリーゼロッテの姿はない。だとすると執務机の方か。しかし、この位置からでは自分の机が邪魔で主の机までは見渡せない。
不意に、マテアスの執務机に積まれた書類の影から、ジークヴァルトの背中が見えた。前かがみになって奥の机の方に伏せているように見える。
(くっそ、何をしてるかまではわからないな)
窓枠に掛ける足の位置をずらしながら、マテアスは窓の端へと移動した。ロープが斜めになって不安定だが手と足をつっぱりながらどうにか体勢を取る。
主の背中越しに、一瞬だが白くて細いものがちらっと垣間見えた。
(誰か嘘だと言ってくれ……!)