ふたつ名の令嬢と龍の託宣
全身がふわりと何かに包まれている感覚がする。その何かが、執務室を包む強大な力と同じものだとマテアスは瞬時に気づいた。
真綿でくるまれるかのごとくやさしく包みこまれているのに、この空恐ろしい圧迫感は一体何なのだ。マテアスの全身は一瞬で総毛立った。
目の端に何か動くものを感じて、マテアスは反射的に窓の中、執務室内を凝視した。前傾姿勢だったジークヴァルトが身を起こしていくのが視界に入る。
その瞬間、マテアスの執務机の上の書類の束が雪崩のように床に滑り落ちていった。
遮るものがなくなったその先で、ジークヴァルトがゆっくりとこちらを振り返る。その視線は、明らかに窓の外にいるマテアスの姿を捉えていた。
見慣れた主の青い瞳と窓越しにしばし見つめ合う。
時が止まったような緊張感の中、マテアスは動くことができなかった。にじんだ汗が、つうっとこめかみを伝っていく。
視線をマテアスから外さないまま、ジークヴァルトの唇がそれはそれは楽しそうに弧を描いた。その笑顔はまるで無邪気な子供のようだ。
(アレはダメだ……!)
本能のレベルで体が動いていた。腕を伸ばしてロープを掴み、壁を駆け上がる勢いで上へと目指す。
真綿でくるまれるかのごとくやさしく包みこまれているのに、この空恐ろしい圧迫感は一体何なのだ。マテアスの全身は一瞬で総毛立った。
目の端に何か動くものを感じて、マテアスは反射的に窓の中、執務室内を凝視した。前傾姿勢だったジークヴァルトが身を起こしていくのが視界に入る。
その瞬間、マテアスの執務机の上の書類の束が雪崩のように床に滑り落ちていった。
遮るものがなくなったその先で、ジークヴァルトがゆっくりとこちらを振り返る。その視線は、明らかに窓の外にいるマテアスの姿を捉えていた。
見慣れた主の青い瞳と窓越しにしばし見つめ合う。
時が止まったような緊張感の中、マテアスは動くことができなかった。にじんだ汗が、つうっとこめかみを伝っていく。
視線をマテアスから外さないまま、ジークヴァルトの唇がそれはそれは楽しそうに弧を描いた。その笑顔はまるで無邪気な子供のようだ。
(アレはダメだ……!)
本能のレベルで体が動いていた。腕を伸ばしてロープを掴み、壁を駆け上がる勢いで上へと目指す。