ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「ヨハン様っ! 作戦変更です!」
片手で手すりを掴んでひらりと飛び越えると、命綱のロープを外しながらマテアスは部屋を突っ切って出ていこうとする。
「え? あ、マテアス、このロープはどうすれば……」
「そんな物後回しです! あなたの馬鹿力の出番ですよ、早く付いて来てください!」
呆気にとられるヨハンを置き去りに、部屋から出たマテアスは階下の執務室を足早に目指した。かろうじて足は前に進んでいるが、今さらながらに全身が震えてくる。
(何なんだ、何なんだアレは)
あんなものが自分の主であるはずがない。
震えに膝をつきそうな足を叱咤して、マテアスはエッカルトの待つ執務室の前へと向かった。それに追いついたヨハンが、気づかわし気にマテアスを覗き込んだ。
「マテアス、いったい何が……」
「今は話せることはありません。とにかくついて来てください」
ヨハンはいつでも冷静沈着で頭の切れるマテアスを子供の頃から尊敬していた。そんなマテアスがいつになく動揺している。
体を動かすしか能のない自分には推し量れないほどの、重大な何かが起きているのだろう。そう思うとヨハンはそれ以上口を開くことはしなかった。
片手で手すりを掴んでひらりと飛び越えると、命綱のロープを外しながらマテアスは部屋を突っ切って出ていこうとする。
「え? あ、マテアス、このロープはどうすれば……」
「そんな物後回しです! あなたの馬鹿力の出番ですよ、早く付いて来てください!」
呆気にとられるヨハンを置き去りに、部屋から出たマテアスは階下の執務室を足早に目指した。かろうじて足は前に進んでいるが、今さらながらに全身が震えてくる。
(何なんだ、何なんだアレは)
あんなものが自分の主であるはずがない。
震えに膝をつきそうな足を叱咤して、マテアスはエッカルトの待つ執務室の前へと向かった。それに追いついたヨハンが、気づかわし気にマテアスを覗き込んだ。
「マテアス、いったい何が……」
「今は話せることはありません。とにかくついて来てください」
ヨハンはいつでも冷静沈着で頭の切れるマテアスを子供の頃から尊敬していた。そんなマテアスがいつになく動揺している。
体を動かすしか能のない自分には推し量れないほどの、重大な何かが起きているのだろう。そう思うとヨハンはそれ以上口を開くことはしなかった。