ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「この力は恐らく、旦那様の守護者によるものです。旦那様に取り憑き操っているのも、恐らくその守護者でしょう」
「何を馬鹿なことを……!」

 マテアスの言うことは荒唐無稽すぎる。誰もがそう思った。
 しかし、今、目の前で執務室を包む強大な力は、邪気をまるで感じさせない。禁忌に落ちた異形のしわざとはとても思えなかった。

 清廉といってもいいほどの力を目の当たりにしている状態で、それ以上否定の声を上げられる者はこの場にはいなかった。

「……真実はどうあれ、これ以上は待てません。力を一点に集中して壁を壊します。みな様の力をお貸しください」

 マテアスの真剣な表情に、一同はごくりとのどを鳴らした。

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