ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 リーゼロッテとして閨事の知識を教えられたことはないが、この先にどんな行為が待つのかは、日本での記憶で十分すぎるほど理解している。ジークハルトの言葉にリーゼロッテは恐怖で身を強張らせた。

 抵抗する間もなくするりと大きな手が下着の中に侵入する。足を閉じようともがくもそれも叶わず、直接秘部に指が這わされていく。

「んあっいやっやめて!」

 リーゼロッテの悲鳴と共に部屋全体が大きく揺れる。荒れ狂う異形たちをちらりと見て、顔を上げたジークハルトが ふっと笑った。

「悪いけど、ちょっとだけおとなしくしといてよ」

 言うなり部屋の圧がガンっと増す。息苦しさが倍増し、異形たちも苦しげな咆哮(ほうこう)を上げた。

 匂いも温もりも瞳の色も、目の前にいるのはジークヴァルトであるはずなのに、その何もかもがジークヴァルトではなかった。
 掴まれた手首がさらにきつく締めあげられ、リーゼロッテは滲む視界を見上げ歯を食いしばった。

 いつもやさしく髪を梳いていた指先が無遠慮にあわいを割り、身も心も痛めつけるようにさらに奥へと侵入してくる。

 誰にも触れられたことがない深い場所に痛みが走る。半狂乱になる異形たちの叫びに同調するように、リーゼロッテは身をよじって泣き叫んだ。

「いやぁいやっいやっヴァルトさま、たすけてヴァルトさま、ヴァルトさまヴァルトさまヴァルトさまぁっ」

 痛みと恐怖と異形たちの叫び声だけが支配する。涙でぐちゃぐちゃになりながら、髪を振り乱してリーゼロッテはただその名を呼んだ。

 声も枯れ果て抵抗する気力も体力も尽きようとしたそのとき、リーゼロッテの目の前を一陣の風が吹き抜けた。

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