ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「わ、わかりましたわ! 許します! もう 許しますから、どうか今すぐ元のお姿に戻ってくださいませ!」
『そう来なくっちゃ。ホント、やっさしいなぁ、リーゼロッテは』
うれしそうに声を弾ませると、ジークハルトはポンっと普段通りの観劇王子の服装に戻った。あぐらのポーズで宙に浮く姿を認めて、リーゼロッテは大きく息をついた。
「……そのかわり……ひとつだけ、お聞かせ願いますか? ジークハルト様……」
真摯に見上げると、ジークハルトは笑顔のまま、何? と首をかしげて見せた。
あの日、リーゼロッテがされたことは、とてもではないが許せるようなことではなかった。しかし、あの時のジークハルトは本気ではなかったと、今では思う自分がいた。
「ハルト様は……本当は、何がしたかったのですか……?」
『んー? うん、まぁ、あの場でリーゼロッテがヴァルトの子供を宿したとしても、それは託宣の子供ではなかっただろうしね……』
ジークハルトの言葉はめずらしく歯切れが悪い。リーゼロッテから目をそらし、なんとなく何かをごまかしているように感じられた。
「どういうことですの?」
リーゼロッテはうやむやにされないように語気を荒げた。片眉を上げて、ジークハルトを可愛らしく睨みあげる。
『リーゼロッテは知らないかもしれないけど、婚姻の託宣を受けた者には、結婚する時期が改めて託宣として降りるんだ。それまではどんなに交わろうとも、託宣の子供は授からないってわけ』
「ええ? でしたらハルト様がしたことに、まるで意味などないではないですか!」
『ヴァルトがなかなかリーゼロッテに手を出さないからさぁ。ちょっとじれちゃって』
ジークヴァルトと同じ顔でてへぺろされて、リーゼロッテはあんぐりと小さな口を開けた。
「そ、そのような理由であのようなことを……!?」
淑女のたしなみも忘れて、その場でがくりと膝をついた。
そんな姿でも優雅に見えるのは、ダーミッシュ領で毎日転びまくっていたからだ。どうせ転ぶのならと令嬢らしい可憐な転び方を研究してきた身としては、優雅に膝をつくのもお手の物であった。
『そう来なくっちゃ。ホント、やっさしいなぁ、リーゼロッテは』
うれしそうに声を弾ませると、ジークハルトはポンっと普段通りの観劇王子の服装に戻った。あぐらのポーズで宙に浮く姿を認めて、リーゼロッテは大きく息をついた。
「……そのかわり……ひとつだけ、お聞かせ願いますか? ジークハルト様……」
真摯に見上げると、ジークハルトは笑顔のまま、何? と首をかしげて見せた。
あの日、リーゼロッテがされたことは、とてもではないが許せるようなことではなかった。しかし、あの時のジークハルトは本気ではなかったと、今では思う自分がいた。
「ハルト様は……本当は、何がしたかったのですか……?」
『んー? うん、まぁ、あの場でリーゼロッテがヴァルトの子供を宿したとしても、それは託宣の子供ではなかっただろうしね……』
ジークハルトの言葉はめずらしく歯切れが悪い。リーゼロッテから目をそらし、なんとなく何かをごまかしているように感じられた。
「どういうことですの?」
リーゼロッテはうやむやにされないように語気を荒げた。片眉を上げて、ジークハルトを可愛らしく睨みあげる。
『リーゼロッテは知らないかもしれないけど、婚姻の託宣を受けた者には、結婚する時期が改めて託宣として降りるんだ。それまではどんなに交わろうとも、託宣の子供は授からないってわけ』
「ええ? でしたらハルト様がしたことに、まるで意味などないではないですか!」
『ヴァルトがなかなかリーゼロッテに手を出さないからさぁ。ちょっとじれちゃって』
ジークヴァルトと同じ顔でてへぺろされて、リーゼロッテはあんぐりと小さな口を開けた。
「そ、そのような理由であのようなことを……!?」
淑女のたしなみも忘れて、その場でがくりと膝をついた。
そんな姿でも優雅に見えるのは、ダーミッシュ領で毎日転びまくっていたからだ。どうせ転ぶのならと令嬢らしい可憐な転び方を研究してきた身としては、優雅に膝をつくのもお手の物であった。