ふたつ名の令嬢と龍の託宣
異形の者たちの存在を知らぬまま領地で十五歳になっていたら、その日を境に突然見えるようになった異形にパニック状態に陥るのは必至だったろう。
「……そうか」
そう言ったきり、ジークヴァルトは口を閉ざした。見つめ合ったままその場にしばらく沈黙が降りる。ほどなくして、ジークヴァルトはリーゼロッテから瞳を逸らした。
「ああ、見つけましたよ! 旦那様、いきなり飛び出して一体何なさってるんですか!」
マテアスが慌てたようにサロンにやってきた。執務中に突然いなくなったジークヴァルトを探しに来たようだ。
「今戻る」
そう言ってジークヴァルトはそのままサロンを出ていった。リーゼロッテをちらっと一瞥しただけで、言葉をかけることはなく去っていく。
(こういうとき、いつも頭をなでていくのに……)
一人残されたリーゼロッテは、物足りなさを感じている自分に戸惑いを覚えた。子ども扱いはやめてほしいと常々思っていたのだから、よろこばしいと思っていいはずなのに……。
(やっぱりあの日のことを気にしているのかしら……)
日光がさんさんと降り注ぐサロンの中、リーゼロッテはもやもやした気持ちを抱えて再び小さくため息をついた。
「……そうか」
そう言ったきり、ジークヴァルトは口を閉ざした。見つめ合ったままその場にしばらく沈黙が降りる。ほどなくして、ジークヴァルトはリーゼロッテから瞳を逸らした。
「ああ、見つけましたよ! 旦那様、いきなり飛び出して一体何なさってるんですか!」
マテアスが慌てたようにサロンにやってきた。執務中に突然いなくなったジークヴァルトを探しに来たようだ。
「今戻る」
そう言ってジークヴァルトはそのままサロンを出ていった。リーゼロッテをちらっと一瞥しただけで、言葉をかけることはなく去っていく。
(こういうとき、いつも頭をなでていくのに……)
一人残されたリーゼロッテは、物足りなさを感じている自分に戸惑いを覚えた。子ども扱いはやめてほしいと常々思っていたのだから、よろこばしいと思っていいはずなのに……。
(やっぱりあの日のことを気にしているのかしら……)
日光がさんさんと降り注ぐサロンの中、リーゼロッテはもやもやした気持ちを抱えて再び小さくため息をついた。