ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「ではお嬢様、三年ほど前に遠縁の方の結婚式のためにあつらえたドレスはいかがでしょう」
「まあ、あのときのドレスね。結局出席は断念したから、着られなかったのよね」

 リーゼロッテは自分のせいで結婚式が台無しになったらと不安になり、結局は直前で出席をやめたのだ。人生の晴れ舞台を、遠縁の子供にぶち壊されたら、自分だったら絶対に嫌だ。

「だけど、三年前のドレスよね。……サイズがあうかしら?」
「まずは合わせてみてはいかがでしょう。手直しして着られるかもしれませんし」
「そうね、エラは裁縫が得意ですものね」

 エラは手先が器用だった。リーゼロッテなどは、初恋の人ジークフリートに贈ろうとハンカチに刺繍を刺し始めたが、やるたびに自分の指を刺して、一年かけてようやく刺繍が完成したほど不器用だった。

 できあがったハンカチはジークフリートに贈ってみたものの、刺繍の出来栄えも微妙だったため、今でも贈ったことを後悔しているリーゼロッテだった。その点エラは、売り物かと思えるような見事な刺繍を披露してくれた。

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