ふたつ名の令嬢と龍の託宣
◇
しばらくガラス越しにサロンの外の庭をじっと見つめていたリーゼロッテは、ふと視線を感じて後ろを振り返った。
サロンの入口に公爵家の護衛服を着た細身の若い男が立っている。じっとリーゼロッテを見ていたようで、目が合うと少しばつが悪そうな表情になった。
「あの……?」
何か用事があるのかと、護衛の男の正面に向き直ってリーゼロッテは軽く首をかしげた。
(この人は確か……エーミール様……グレーデン侯爵家の方だったわよね……)
エーミールはリーゼロッテが公爵領へ赴く際に、護衛としてわざわざダーミッシュ領まで迎えにきてくれた男だ。その時にアデライーデに紹介されたのをリーゼロッテは思い出した。
彼の方が家格が上だということに思い当たって、リーゼロッテは淑女の礼を取った。
深窓の妖精姫と噂される令嬢は、サロンから見える庭をバックに、そのふたつ名に恥じない儚さを備えていた。リーゼロッテの優雅な礼に見とれていたエーミールは、はっと我に返り慌てたようにサロンに足を踏み入れた。
「リーゼロッテ様、わたしに対してそのように礼を取る必要はない」
「ですが……」
戸惑うリーゼロッテに男はやさしく微笑みかけた。
「確かにわたしは侯爵家の人間だが、リーゼロッテ様はフーゲンベルク公爵夫人となられるお方だ。それに今は伯爵家にその身を落とされているが、あなたはラウエンシュタイン公爵家の正統な姫君でいらっしゃる」
「まあ、身を落とすなどと……」
しばらくガラス越しにサロンの外の庭をじっと見つめていたリーゼロッテは、ふと視線を感じて後ろを振り返った。
サロンの入口に公爵家の護衛服を着た細身の若い男が立っている。じっとリーゼロッテを見ていたようで、目が合うと少しばつが悪そうな表情になった。
「あの……?」
何か用事があるのかと、護衛の男の正面に向き直ってリーゼロッテは軽く首をかしげた。
(この人は確か……エーミール様……グレーデン侯爵家の方だったわよね……)
エーミールはリーゼロッテが公爵領へ赴く際に、護衛としてわざわざダーミッシュ領まで迎えにきてくれた男だ。その時にアデライーデに紹介されたのをリーゼロッテは思い出した。
彼の方が家格が上だということに思い当たって、リーゼロッテは淑女の礼を取った。
深窓の妖精姫と噂される令嬢は、サロンから見える庭をバックに、そのふたつ名に恥じない儚さを備えていた。リーゼロッテの優雅な礼に見とれていたエーミールは、はっと我に返り慌てたようにサロンに足を踏み入れた。
「リーゼロッテ様、わたしに対してそのように礼を取る必要はない」
「ですが……」
戸惑うリーゼロッテに男はやさしく微笑みかけた。
「確かにわたしは侯爵家の人間だが、リーゼロッテ様はフーゲンベルク公爵夫人となられるお方だ。それに今は伯爵家にその身を落とされているが、あなたはラウエンシュタイン公爵家の正統な姫君でいらっしゃる」
「まあ、身を落とすなどと……」