ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 サロンから出ていくふたりを不遜な笑顔で見送ったエーミールだったが、エマニュエルの小さくなっていく背に向けて忌々しそうに舌打ちをした。

「成り上がりの使用人風情(ふぜい)が……」

 その横をカークがゆっくりと通り過ぎ、ふたりを追うように出ていった。

「ジークヴァルト様もあのような異形をリーゼロッテ様につけるとは……」

 エーミールにとっては、力こそが正義だった。貴族としても、力ある者としても、ジークヴァルトはその頂点に立つべき存在だ。

 エーミールは力を持つ者として、王家に仕える道よりもジークヴァルトへの忠誠を選んだ。ジークヴァルトが道を踏み外さないよう、行くべき正しい場所へ導くことこそが、己の役目だと信じて疑わない。

「全てはジークヴァルト様のために……」

 サロンの出口を睨みつけるように、エーミールはひとりつぶやいた。

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