ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 不意に頬に手を添えられて、顔を上向かされた。その先には、今まで見たこともない柔らかな笑顔でリーゼロッテを見つめるジークヴァルトがいた。

「そら、あーんだ」

 頬に添えた手のひらはそのままに、ジークヴァルトはリーゼロッテにクッキーを差し出した。呆然とジークヴァルトを見つめたまま、リーゼロッテは無意識に口を開いた。ジークヴァルトの指がゆっくりと唇の隙間にクッキーを押し込んでいく。

 クッキーは口の中でほろりと崩れ、すぐに甘い味が広がった。


(ジークヴァルト様が…………デレた!!)

 一瞬でリーゼロッテの全身が真っ赤に染まる。と同時に体中から力がボボンと溢れだした。

「ほあっリーゼロッテ様!?」

 一気に力を放出しきったリーゼロッテにマテアスが叫び声をあげる。力が抜けて、くにゃりとジークヴァルトにもたれかかった。


 結局その日リーゼロッテは、ジークヴァルトの膝の上で、ゆっくりたっぷり、クッキーを差し入れられるはめとなったのだった。








 ふたつ名の令嬢と龍の託宣 終

▶氷の王子と消えた託宣(龍の託宣2)に続く

        (新規小説で投稿中)


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